まだ知らない沖縄へ─夕日とロマンの伊江島で出会う特別な時間

まだ知らない沖縄へ──夕日とロマンの伊江島で出会う特別な時間
沖縄本島からフェリーでわずか三十分。
海の向こうにぽっかりと浮かぶ伊江島は、観光ガイドだけでは語り尽くせない宝物のような魅力を秘めている。
近年では、映画『木の上の軍隊』や『かなさんどー』の舞台となり、その名はさらに多くの人々の耳に届くようになった。
けれど、この島の本当の魅力は、青く透き通る海や穏やかな風景だけにとどまらない。訪れた人の心にだけそっと刻まれる、特別な瞬間がここにはある。


港に着いたら、まずは島の空気に溶け込むように歩いてみてほしい。
道端で出会う人々は、観光客にも気さくに声をかけ、笑顔とともにおすすめの場所を教えてくれる。その温かさに触れると、初めて訪れたはずなのに、不思議と懐かしい気持ちになる。

やがて島時間は夕暮れへと向かう。
西側にある「夕日の丘」から眺める夕日は、ゆるやかに沈みゆく太陽とともに海を黄金色に染め、訪れる人の心をそっと癒してくれる。そんな絶景を前に、島自慢のラム酒をグラスに注ぐ。
地元のサトウキビから生まれ、日本一を二度受賞したその香りは、トロピカルフルーツのように甘やかで、飲み口は驚くほど滑らかだ。泡盛が有名な沖縄で、伊江島だけが持つ特別な味わいに出会えることも、この島の魅力のひとつだ。

やがて感動は夜へと続く。
空は漆黒のキャンバスに変わり、星がこぼれるように瞬き始める。都会では見えない天の川が淡い帯を描き、頭上に広がる。静かな波音とともに、時間がゆったりと流れていく。この贅沢な夜空を味わうためだけに、宿泊を選ぶ価値があるだろう。

もし時間が許すなら、この夏の終わりに訪れるのもいい。
旧盆(今年は9月4日・5日)の夜、島は太鼓の音と掛け声で満ちる。集落ごとに青年会がエイサーを披露し、道は熱気と興奮の波に包まれる。
見ているうちに手拍子を打ち、気づけば踊りの輪の中にいる。知らないはずのリズムなのに、不思議と体が覚えているようだ。
伊江島は観光地として飾らないまま、訪れた人の心に深く残る。次に沖縄を旅するときは、この小さな島にも足を延ばしてほしい。きっとあなたの旅は、新しい色を帯びるに違いない。